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北宇治高校吹奏楽部の演奏を生で体験!
広がる『響け!ユーフォニアム』の世界

10月5日から2期が始まる吹奏楽部アニメ『響け!ユーフォニアム』をテーマにした、吹奏楽コンサート『響け!ユーフォニアム 公式吹奏楽コンサート ~北宇治高校吹奏楽部 第1回定期演奏会』が、10月1日(土)と2日(日)に宇治市文化センター大ホールで開催された。ここは11話で部員たちがホール練習を行なったホールのモデルになった会場。麗奈と香織が、ソロを賭けて対決した場所である。

演奏は、アニメ本編で使われる演奏を担当した“洗足学園音楽大学 フレッシュマン・ウインド・アンサンブル2014”の62名と、指揮者は音楽監修を務めた大和田雅洋。司会進行は、アニメフリークのキャスター松澤千晶。さらに『響け!ユーフォニアム』シリーズの音楽プロデューサーの斎藤滋が解説を行う。トークゲストには「優子ことデカリボン先輩です!」と、頭に赤いリボンを付けて登場した、トランペットの2年生・吉川優子役の山岡ゆり。歌のゲストには、1期2期と続けてOPテーマを担当するTRUEが登場して会場を沸かせた。

このコンサートは、『響け!ユーフォニアム』本編の物語中で演奏された楽曲を生で聴いて、2期を前にあの感動を音で体感しようという趣向。物語の時系列に沿って楽曲が演奏され、運動会でお馴染みの「地獄のオルフェ」では、最初は平坦だが最後に突然激しくなる楽曲展開を、斎藤が「プロレスの様式美と同じだ!」と絶妙に例えて笑いを取る。「海兵隊」などは、吹奏楽部の顧問である滝先生の指導を受ける前と後の両バージョンを披露。下手に演奏するのは逆に難しいそうだが、指導前の音やテンポがずれまくった演奏には笑いが沸き起こり、山岡も思わず「それにしても酷すぎ。あまりの酷さに鳥肌が立った!」とコメントして、さらなる笑いを誘った。

感動再びといった感じで歓声があがったのは、「きらきら星」と「愛を見つけた場所」だ。「きらきら星」は、伸び悩んでいた葉月が、久美子と緑輝に誘われて、初めて3人で合奏した曲。実際にチューバ、ユーフォニアム、コントラバスの3人で演奏され、葉月ら3人の友情をほうふつとする、あたたかくほんわかしたムードが会場を包みこんだ。麗奈と久美子が重い楽器を担いで登った夜の大吉山で演奏した「愛を見つけた場所」も、アニメ本編同様にトランペットとユーフォニアムで演奏。凛として美しく、でもどこか脆さも感じさせるような、まさしく女同士の友情を音にした表現で観客を沸かせた。

また、サンフェス(サンライズフェスティバル)で演奏した「RYDEEN」やコンクールで演奏した「プロヴァンスの風」と「三日月の舞」も演奏。「三日月の舞」は、アニメ本編では麗奈がソロを吹くが、このコンサートでは香織の音を担当したトランペットの富岡愛彩実が担当し、ここでしか聴けないレアなソロを聴かせて観客を聴き惚れさせた。そんな富岡に対して、山岡は「どうでした?」「あのアニメは私が吹いてるんだよとか、誰かに自慢したりは?」など質問責めしていると、いつしか矛先は山岡に向き、富岡とトランペットのソロ対決することに。「え! 私、麗奈じゃないし。優子はオーディションのとき客席にいたんですけど?」と、しどろもどろになった山岡。実は中高の6年間を強豪校の吹奏楽部で過ごした経験を持つだけに、会場に期待が広がった。2人が演奏を終えると、斎藤が「あなたがソロを吹きますか?」と、 滝先生のマネを始め、山岡も「私は吹けません。ソロは富岡さんが吹くべきだと思います!」と続ける。渾身の“ごっこ”に会場からは、拍手と歓声と笑いが贈られた。

歌のゲストとして、本編最後に「DREAM SOLISTER(Movie Ver.)」を披露したほか、アンコールで2期OPテーマ「サウンドスケープ」(10月12日にシングルとしてリリース)を吹奏楽バージョンで歌唱したTRUE。「サウンドスケープ」を人前で歌ったのはこのコンサートが初めて、しかもそれが通常と違うアレンジということで、「ずっと一人楽屋で、仔犬のようにプルプル震えてました!」と、直前までの気持ちを暴露。しかし、ひとたび歌い始めると、演奏を凌駕するほどのパワフルな歌声で観客を圧倒した。これには指揮の大和田も「ブラスバンドの演奏を上回る、これほどの声量を持った歌手はそういないです!」と、TRUEの歌声に太鼓判を押した。

イベントを終え、「僕たちがどれほどの熱量と、どれほどの愛情を注いで作っているかが、伝わっていたらうれしいです」と斎藤。フレッシュマン・ウインド・アンサンブルのメンバーも、滝先生ならぬ大和田先生のしごきに耐え、久美子たちと共に成長を重ねてきた。その成果はもちろん2期の放送でも聴けるわけだが、機会があればぜひ生で聴いてほしいもの(次回は11月20日にも神奈川県民ホールで開催)。生の吹奏楽体験が、『響け!ユーフォニアム』という作品の魅力を、もう一段階上に広げてくれた。
(取材・文/榑林史章)

宇治市文化センター公演に出演した山岡ゆりさんとTRUEさんから、イベントに寄せてコメントをいただきました!

山岡ゆり

―― イベントの感想を。

「吹奏楽部のアニメなので、こういうスタイルのイベントがしっくりくるなと思いました。実際に私は中高の6年間吹奏楽部で、当時は定演(定期演奏会)をやっていたし他校の定演にもよく足を運んでいたので、当時のことが思い出されてとても楽しかったです」

―― 今回披露された楽曲で、思い入れのある曲は?

「それはもう「三日月の舞」でしょう!あのソロって、実は凄くハードルが高くて。高音から低音までまんべんなく使われているので、唇の形だけで音程を変えなければいけない場所もたくさんあったり、トランペットのあらゆる技術が詰め込まれているんです。大会で吹くのは、かなり度胸が必要ですね」

―― トークゲストでの出演でしたが。

「やっていた当時のことを思い出しながら、お話ができればいいなと思って。『響け!ユーフォニアム』は、ファンタジー要素はなく現実に忠実で、私も自分が演じた(吉川)優子たちがやっていたような練習をやっていたので、経験者としてもお話ができたらと思いました」

―― ああいうソロ争いは実際にありましたか?

「私の学校ではなかったです。確かに上手い後輩が入って来たことはありました、コンクールは3年間の集大成という部分もあるので、3年間頑張ってきた先輩に譲るのが通例でしたね。吹奏楽部って何気に体育会気質なので、先輩を差し置いてソロをやりたがる、麗奈のような1年は実際にはあまりいないんじゃないかな。そういう普通は言わないけど心の片隅で思ったことがあるようなことを、実際に言うと北宇治高校のような人間関係のドラマが生まれる。それこそが『響け!ユーフォニアム』の魅力であり面白さでしょうね。」

―― 1期を振り返りつつ、2期の見どころをお願いします。

「1期は演奏面で、上手くなりたい気持ちが軸にあってその為に人間関係が複雑になっていった。2期は、どちらかと言うと人間関係に主軸が置かれて、その結果演奏がどうなっていくのか。人間関係が演奏にどう影響を与えていくのか、楽しみにしていてほしいです。優子は、1期では悪者的な感じでしたが、あれは先輩のことを想うがゆえの行動でした。人の気持ちを考えているだけで、決して自己中というわけではないんです。2期でも、誰かのために動いているなぁと思うシーンがちらほらあります。そういう目線で見ると、優子の印象も変わるんじゃないかな」

―― 演じて大変な部分はありますか?

「優子は感情の振り幅が大きく、ストレートに気持ちを出すタイプ。怒るときは怒るし、泣くときは泣く。喜怒哀楽を隠そうとはしません。感情をストレートに出すのはけっこう大変で、毎回優子についていかなきゃ! と、置いて行かれないようにするのに必死です。そこは2期も変わらずで、そこも含めて楽しくやらせていただいています」

―― 11・20に神奈川県民ホールに足を運ぶ方に向けてメッセージを。

「優子たちが物語を通じて成長すると同時に演奏もどんどん上手くなっていく、その成長過程も一緒に楽しめる構成になっています。吹奏楽のコンサートを見たことのない方、定演に行かれたことのない方も楽しめるものになっています。アニメが好きで来てくれた方も、あのシーンで出てきた曲だ! とか、アニメを思い出して楽しんでいただけると思います。神奈川では、あすか先輩こと寿 美菜子さんがトークゲストで出演しますので、トークもお楽しみに!」

TRUE

―― イベントの感想を。

「すごく緊張しました。本当に『響け!ユーフォニアム』が大好きな方ばかりが集まってくださっているので、その思いと同じくらい緊張しました。私の出演は、プログラムの後半なので、それはそれで緊張します」

―― 『響け!ユーフォニアム』という作品については?

「私にとっては、改めてもう一度音楽は楽しいものだと思わせてくれた作品です。長らく仕事として歌っていると、いろいろな思いを抱え過ぎてしまうので、改めて音楽の原点に返らせてもらえました。楽しい思い出も悔しい思い出もひっくるめて、私の音楽人生なんだって教えてくれた。もう一回音楽の旅をさせてくれました」

―― 好きなキャラはいますか?

「麗奈かな。私は久美子ほど俯瞰でものを見られる人ではなくて、そこに自分がいて物事を考えるタイプなので。麗奈のように特別になりたいと思っているわけではありませんが、私なりの輝きを求めて歌い続けているので、そこはとても共感します。特別になりたいと、自分に言い聞かせてるところも、すごく分かりますね」

―― 高校生のころは何を?

「すでにお仕事で歌っていました。ですが『響け!ユーフォニアム』を見て、みんなで何か一つのものを作ることの厳しさや楽しさは、当時の私は知らなかったことだな〜と実感しましたね。いつも1人でステージに挑む感じでしたから。今回のようにたくさんの仲間とステージに立つと、それを改めて感じます。もちろんプレッシャーも感じますが、それを越えるくらい気持ちいいのも確かです」

―― 自身の曲が、ブラスバンドアレンジになったわけですが。

「みなさんすごく楽しそうに演奏していましたし、聴かれる方には新鮮に受け取めてもらえると思います。指揮者の方は私と背中合わせですが、すごく通じてる感じがありますね。私の歌に込める感情が高まっていくと、音もそれに合わせてくれる。息づかい、空気の動き、それが不思議と合うんですよ。いつもとはまったく違うスケールで、より感動をお届けできるものになりました」

―― 2期の見どころは?

「1期は目標に向かって進む青春の泥臭さや力強さ、音楽のキラキラとした楽しさ。2期は、それらを踏まえた上でさらに人間模様がより深くなります。誰かに伝えたい想いが音楽を続ける原動力になっていたり。友人、先輩、後輩、恋人、家族、みんなそれぞれ気持ちを伝えたい相手がいるので、見ているみなさんも共感できるキャラクターが必ずいます。そんな沢山の想いに寄り添うように、2期OPも作りました」

―― 2期のOPは「サウンドスケープ」という曲ですが。

「前回の「DREAM SOLISTER」では“響け!”をテーマに、今回は“届け!”をテーマにしました。前の「DREAM SOLISTER」は多くの方にたくさん愛してもらったので、それにお返しができるようにと思って『響け!ユーフォニアム』のエッセンスをたくさん詰め込みました。作品と共に寄り添っていけたら幸せです!」

―― 11・20に神奈川県民ホールに足を運ぶ方に向けてメッセージを。

「神奈川県民ホールのときは2期のストーリーが進んでいる中で見ていただくことになるので、より深いところで楽しんでもらえると思います。音楽と一緒に作品をなぞれる機会はなかなかないし、しかも実際に演奏していたメンバーですから。作品ファンの方はぜひ!」